自動車保険には、自身のケガや同乗者のケガを補償する保険の代表的なものに、人身傷害保険や搭乗者傷害保険があります。
では、この人身傷害保険と搭乗者傷害保険、どちらか一方の補償だけを付けておけば問題ないでしょうか?
両方とも加入するメリットはあるのでしょうか?
また、両方加入した際は、重複して費用が支払われるのでしょうか?
もちろん補償は手厚いに越したことはありませんが、毎月の保険料はできるだけ抑えたいものです。
今回は、人身傷害保険と搭乗者傷害保険の関係について解説いたします!
人身傷害保険と搭乗者傷害保険の加入タイプ
人身傷害保険と搭乗者傷害保険の扱いは、保険会社や保険商品によってパターンは様々です。
人身傷害保険であればどんな自動車保険商品にも付けることができますが、最近では搭乗者傷害保険は付けることができない商品などもあります。
詳しくはこちらの記事をどうぞ。
では、人身傷害保険と搭乗者傷害保険の加入パターンにはどのようなものがあるのでしょうか?
(1)人身傷害保険のみ付けられる商品
保険商品によっては、そもそも人身傷害保険しか付けることができないものもあります。
東京海上日動の主力商品である「トータルアシスト」などもその代表例ですが、このタイプは搭乗者傷害保険を付けることができません。
そもそも搭乗者傷害保険という補償種類が選択肢として存在していないので、人身傷害保険しか選ぶことしかできないのです。
しかし、人身傷害保険があれば、どんなに高額になっても実際にかかった治療費などをカバーしてくれますので安心です。
また、「搭乗者傷害保険」という名称ではなくても、たいていは人身傷害保険をさらに充実させるための特約が用意されています。
例えば「人身傷害一時金特約」は、一般的に入院通院が5日以上になった場合に5万円や10万円が一時金として支払われる補償内容で、ケガの補償をより充実させることができます。
(2)搭乗者傷害保険のみでも付けることができる商品
自身のケガを補償する保険種類として、搭乗者傷害保険だけを付けることが可能な保険商品もあります。
例えば、イーデザイン損保やおとなの自動車保険(セゾン自動車火災保険)などは、人身傷害保険を付けることもできますが、搭乗者傷害保険のみを選択し契約することも可能です。
しかし、この場合、保険料は多少安くすることはできますが、補償内容は充分ではありません。
保険会社としても、まずは人身傷害保険を付けて、さらに補償を充実させるために搭乗者傷害保険を付けることをおすすめしています。
これはどういうことでしょうか?詳細については、後ほど説明します。
(3)人身傷害保険も搭乗者傷害保険も付けることができる商品
搭乗者傷害保険を付けることができる商品は、必ず人身傷害保険も付けることができます。
基本的には、人身傷害保険をベースとして、その上乗せとして搭乗者傷害保険を付けるという考え方が一般的です。
ソニー損保などのように、そもそも搭乗者傷害保険は「搭乗者傷害特約」という名称で、人身傷害保険のオプションとしてではないと付けられないという商品もあります。
人身傷害保険では、治療費や交通費など実際にかかった費用を補償してもらうことができますが、支払対象となるものには制限があります。
例えば、交通事故で家事ができない場合の外食代、入院した時にかかったテレビカードの費用、お見舞いにくれた方へのお返しにかかる費用などは、人身傷害の補償対象とはなりません。
一方、搭乗者傷害保険は、通院や入院の日数をベースに支払われますが、その使い道は自由。人身傷害保険では支払い対象とならない費用に充てることも可能なのです。
【ワンポイント:人身傷害保険と搭乗者傷害保険、重複して保険金はもらえるの?】
人身傷害保険と搭乗者傷害保険の関係は、人身傷害保険の補償をさらに充実させるために搭乗者傷害保険を付けるというのが一般的。
そのため、それぞれの支払条件さえ満たせば、重複して保険金を支払ってもらうことができるのです。
人身傷害保険と搭乗者傷害保険は両方加入した方がいい?
前述の通り、自動車保険によっては人身傷害保険しか選べない商品もあります。
では、もし人身傷害保険も搭乗者傷害保険も付けることができる保険商品の場合は、どちらを優先すべきでしょうか?
両方とも加入する必要性やメリットはあるのでしょうか?
人身傷害保険と搭乗者傷害保険どっちを優先すべき?
結論から言うと、人身傷害保険には必ず加入すべきです。
それは、人身傷害保険が、実際にかかった費用を補償してくれるというメリットや、人身傷害保険でないとカバーされない費用があるからです。
たしかに搭乗者傷害保険は、人身傷害保険よりも安い保険料で運転者やその同乗者のケガの費用をカバーすることができます。
しかし、搭乗者傷害保険は定額なので、実際にかかった治療費と比べると“全然足りない!”というケースが発生してきます。
レントゲン代やCTなどを撮影すれば、1回の診察で数万円の費用がかかるので、1日通院5千円や1万円の搭乗者傷害保険では全くカバーはできません。
では、実際に事故にあったと仮定した場合、人身傷害保険と搭乗者傷害保険では、どのように支払われる費用に差が出てくるのか確認してみましょう。
【ワンポイント:人身傷害保険と搭乗者傷害保険、同じ事故でももらえる金額は桁違い!】
事故例:
ある日、保険加入者の男性・Aさん(会社員)が車を運転中、不注意によってガードレールに接触してしまった単独事故。
ケガの状況:
接触の際の衝撃で、運転手のAさんと、助手席に乗っていた奥さんのBさん(パート)が、首や腰に痛みを発症。
2人は病院に行き、レントゲンやCT検査を行い、AさんBさんともにむちうちと診断。
初日に処方箋が出て、薬局では痛み止めと湿布薬をもらい、その後、2名とも2日間通院。
奥さんのBさんについては、通院した3日間のうち、2日間はパートの仕事をお休みして通院。
かかった費用:
・合計3日間の通院治療費(2名分)…10万円 ※レントゲン代、CT検査などを含むため高額になります。
・薬代(痛み止めと湿布/2名分)…で2,000円
・通院交通費…タクシー代3,000円(事故当日の通院に2名で使用した往復タクシー代)、バス代合計1,500円(2名の2日間の通院時)
合計:106,500円
では、上記のケースで人身傷害保険と搭乗者傷害保険では、それぞれいくら保険会社から支払ってもらえるでしょうか?
人身傷害保険
(1)治療費:10万円
(2)薬代:2,000円
(3)通院交通費…タクシー代3,000円、バス代合計1,500円
(4)奥さん・Bさんの2日分の休業損害:12,000円
(5)慰謝料:25,200円(1人12,600円…通院1日4,200円×3日分)
合計:143,700円
搭乗者傷害保険(一時金タイプ)
(1)4日以内の入通院となるため一時金として1万円×2名分。
合計:2万円。
※支払われる金額はあくまで一例です。特に人身傷害保険の慰謝料などは保険会社によって基準が変わったり、搭乗者傷害保険も商品によって支払いパターンが多数あります。
人身傷害保険は143,700円に対し、搭乗者傷害保険はなんと2万円のみ!
ちょっとしたケガでも、これだけ多くの差が出てしまうのです。
人身傷害保険は、治療費や交通費などかかった費用を全額負担してもらえることに加え、休業損害や慰謝料も対象となります。
一方、搭乗者傷害保険は、入院や通院の日数が計算のベースとなり、どんなに治療費が多くかかっても、補償される金額は予め決められた金額となります。
人身傷害保険と搭乗者傷害保険どちらを優先すべきか迷ったら、必ず人身傷害保険を優先させましょう。
人身傷害保険と搭乗者傷害保険は両方加入した方がいい?
人身傷害保険を付けた場合、搭乗者傷害保険をオプションとしてつけるべきでしょうか?
結論は、「YES」です。
搭乗者傷害保険は、死亡したり後遺障害が残るような大けがをしなければ、支払われる金額は人身傷害保険に比べるとわずかなものです。
しかし、搭乗者傷害保険が全く役に立たないかと言うと、決してそんなことはありません。
人身傷害傷害保険で治療費などの実際にかかる費用をカバーすることはできますが、人身傷害保険でカバーできる費用の一部には、すぐに算出や支払い可否の判断が難しい項目などもあります。
例えば人身傷害保険では、休業損害、慰謝料、逸失利益などの費用もカバーすることができますが、これらの費用は詳しい調査や必要となる資料も多く、すぐに支払ってもらうことが難しい場合もあります。
そんな時、搭乗者傷害保険があれば、支払われる費用が予め決められていることもあり、手続きも保険会社の支払い判断も比較的早く、当面の費用として充てることが可能になります。
また、搭乗者傷害保険を人身傷害保険の上乗せとして考えれば、人身傷害保険では補償対象とならない費用として使うこともできます。
搭乗者傷害保険の一時金の使い道は自由なので、具体的には、事故のお見舞いのお返し代や、家事ができない場合の外食費などにあてることができるという考え方もできるのです。
つまり、人身傷害保険と搭乗者傷害保険は両方加入した方が良いのです。
もちろん大切なのは、補償と保険料のバランスですから、まずは複数社の保険会社の保険料を比べてみてください。
詳しくはこちらをどうぞ。