自動車保険を乗り換えたいと考えている人も多いのではないでしょうか。
基本的には、現在の契約の満期を待ってから新しい保険に乗り換えるほうが、手続きがスムーズにいくためおすすめです。
しかし、「別の保険会社の見積もりを確認したら大幅に安かった」「保険会社の対応が不満」といった理由で満期前に解約したい人もいるでしょう。
また、自動車保険の契約期間は1年が通常ですが、長期の保険に加入している場合は、満期を待つよりも早めに乗り換えたほうが得になる場合があります。
そうした場合は、新しい保険会社と契約するとともに、現在契約している保険会社に連絡することで、契約途中でも保険会社を乗り換えることができます。
中途解約は、送られてくる書類に記入して保険証券と一緒に返送するだけなので、手続きも簡単です。
ただし、保険を契約途中で乗り換える場合には注意すべき点もあります。
よく確認せずに乗り換えてしまうと、保険料が安くなっても解約払戻金や等級の関係で損をしてしまうケースがあります。
保険を契約期間の途中で乗り換える場合は、トータルで得をするのか事前にしっかりと計算することが大切です。
また、実際に手続きを行う際には、保険の空白期間をつくらないよう注意が必要です。
今回は、自動車保険を契約途中で見直す場合のデメリットや注意点について解説します。
自動車保険は中途解約できる?
自動車保険は、中途解約が可能です。
契約期間の途中でほかの保険会社に乗り換えても、違約金などは発生しません。
手続きも比較的簡単で、保険会社に連絡すると送られてくる書類に必要事項を記入して、保険証券と一緒に返送するだけです。
ただし、自動車保険の中途解約には、デメリットや注意すべき点がいくつかあります。
保険料が安くなるからといって契約途中で安易に保険会社を乗り換えてしまうと、トータルで損をしてしまう場合があります。
自動車保険の中途解約を行う際には、そうしたデメリットや注意点を十分に理解して、本当に費用負担が減るのか事前にしっかりと確認することが大切です。
満期前に乗り換えるとどんなデメリットがある?
自動車保険の中途解約には、いくつかのデメリットがあります。
契約途中で保険を乗り換える際には、メリットとデメリットを事前によく比較することが大切です。
解約払戻金は保険料よりも低額になる
保険料を前払いしていた場合、保険を中途解約すると、残りの期間に応じて解約払戻金が発生します。
この解約払戻金は、残り期間の保険料よりも低い金額であることに注意が必要です。
例えば、残り契約期間が半年の段階で解約すると、当初支払った保険料の半額が戻ってくると考える人がいるかもしれません。
しかし、実際に戻ってくる解約払戻金は30%程度です。
中途解約してしまうと、差額の20%分だけ損をすることになります。
中途解約する場合はそうした差額も考慮して、乗り換えによって本当に得をするのかしっかりと事前に計算する必要があります。
解約払戻金は「短期率」に基づいて計算される
解約払戻金が保険料よりも低いのは、「短期率」という基準に従って計算されるためです。
短期率は、満期日までの残りの月数に応じて設定されている料率のことです。
保険は、期間が長くなるほど月ごとの保険料が安くなります。
中途解約する際には、「保険開始日から解約日までの期間の保険」があると仮定して、その期間に応じた保険料を算定し、当初支払った保険料との差額が解約払戻金として返金されます。
その算定の基準となるのが短期率です。
自動車保険各社が適用している短期率は、一般的に以下の通りです。
7日まで | 15日まで | 1ヶ月まで | 2ヶ月まで | 3ヶ月まで | 4ヶ月まで | 5ヶ月まで |
10% | 15% | 25% | 35% | 45% | 55% | 65% |
6ヶ月まで | 7ヶ月まで | 8ヶ月まで | 9ヶ月まで | 10ヶ月まで | 11ヶ月まで | 12ヶ月まで |
70% | 75% | 80% | 85% | 90% | 95% | 100% |
表に記載されている割合は、払戻金ではなく保険会社がもらう割合です。
例えば、6ヶ月で解約する場合は当初支払った保険金の30%が払い戻され、10ヶ月で解約した場合は10%が解約払戻金として振り込まれます。
月割で保険料が返金される場合もある
多くの保険会社では短期率に基づいて解約払戻金が計算されますが、月割で返金を行っている保険会社も少数あります。
そうした保険会社を利用しているのであれば、1年契約の残り6ヶ月で解約すると、当初支払った保険料の半額が戻ってきます。
そのため、短期率による損失を気にせずに中途解約を行うことができます。
返金システムは保険会社によって異なるため、どういった基準で解約返戻金を計算するのか知りたい場合は、加入している保険会社に確認してみましょう。
また、保険料を一括払いではなく月払いで支払っている場合は、解約すれば翌月からの支払いがなくなるだけなので、損をすることはありません。
そのため、契約期間の途中で解約する予定がある場合は、月払いにしておいたほうが良い場合があります。
ただし、月払いには、一括払いと比べて保険料が5%程度割高になるというデメリットがあります。
ノンフリート等級の上昇が遅れてしまう
自動車保険を中途解約すると、ノンフリート等級のランクアップが遅れてしまうというデメリットがあります。
ノンフリート等級とは?
ノンフリート等級はドライバーの安全運転度をランク付けしたもので、その等級に応じて自動車保険の保険料が割引されます。
等級は1等級から20等級までの20ランクに分かれており、事故を起こすと等級が下がりますが、自動車保険の契約後1年間無事故の場合は等級がひとつ上がります。
中途解約するとランクアップが遅れる
ノンフリート等級が上がると保険料が安くなるため、なるべく早く等級が上がるほうがお得です。
しかし、保険を中途解約すると等級の上昇が遅れてしまいます。
例えば、「2020年1月1日から2021年1月1日まで」の自動車保険を10等級で契約していて、2020年7月1日に新しい保険に乗りかえる場合を考えてみましょう。
保険を乗り換えなかった場合は、無事故であれば2021年1月1日に11等級になり、より安い保険料で自動車保険を利用できるようになります。
それに対して7月1日に乗り換えた場合は、「翌年の7月1日」にならないと1年間無事故とみなされず、半年だけ等級のアップが遅れてしまいます。
保険期間 乗り換えの有無 | 2020年1月1日 から12月31日 | 2021年1月1日 から6月30日 | 2021年7月1日以降 |
乗り換えない場合 | 10等級 | 11等級 | 11等級 |
乗り換えた場合 | 10等級 | 10等級 | 11等級 |
等級の上昇が遅れれば、保険料の割引額もその分少なくなります。
自動車保険の中途解約を行う場合は、こうしたノンフリート等級への影響も考慮して、中途解約して本当に得になるのかを事前にしっかりと確認する必要があります。
「保険期間通算特則」が適用される場合は問題ない
ただし、保険会社の中には、そうしたランクアップの遅れが起こらない「保険期間通算特則」というサービスを提供しているところもあります。
保険期間通算特則は、中途解約によってノンフリート等級の算定期間をリセットせず、前の保険の契約期間とあわせて計算する方法です。
前述の例でいえば、保険期間通算特則を適用すると、2020年7月1日に乗り換えたとしても2021年1月1日に11等級にランクアップします。
そのため、中途解約によるノンフリート等級への悪影響がありません。
ただし、すべての保険会社で保険期間通算特則が利用できるわけではありません。
中途解約で保険の乗換えを行う場合は、保険期間通算特則が適用されるのか新規契約を予定している保険会社に問い合わせてみましょう。
事故を起こしてしまった場合は保険料が高くなる
現在の保険契約期間中に事故を起こしてしまった場合は、ノンフリート等級が下がるため、新規契約の保険料が高くなることにも注意しましょう。
一般的に、事故を起こすと等級が3段階下がります。
事故を起こしても現在の保険契約期間中は保険料が変わりませんが、次回以降の保険料が高くなります。
そうした場合に保険を中途解約してしまうと、下がったランクで計算された高めの保険料を早めに支払わなければならなくなります。
現在の契約期間中に事故を起こしている場合は、満期まで保険の乗り換えを待ったほうが得をするケースが多いです。
なお、事故を起こしても保険を利用しなければ等級は下がりません。
満期前の乗り換えはトータルで安くなることを確認してから
以上のように、満期前に自動車保険を乗り換えるとさまざまなデメリットがあります。
契約途中で保険を乗り換えたい場合は、解約払戻金やノンフリート等級への悪影響を考慮して、本当に得をするのかしっかりと計算したうえで行うことが大切です。
中途解約にはデメリットがあるものの、それを踏まえても乗り換えによって特をするケースは多くあります。
代理店型の高めな保険からネットなどで手続きするダイレクト型の保険に乗り換える場合や、保険内容を見直して不要な補償内容を削った保険に変更する場合などは、中途解約してでも早めに切り替えたほうが得をすることがあります。
事前にしっかりと計算して、トータルの費用負担が軽減されることが確認できたら、満期前でも積極的に乗り換えを行いましょう。
なお、計算して明確なメリットが見出せなかった場合は、満期まで待ってから乗り換えることをおすすめします。
満期前に自動車保険を変更する場合の注意点
満期前に自動車保険を乗り換える際には、いくつか注意すべき点があります。
保険の空白期間をつくらない
自動車保険を乗り換える際には、保険に加入していない期間をつくらないことが何より重要です。
保険に加入していない期間ができてしまうと、万が一その期間に事故が起こった場合に補償が受けられません。
多額の費用を自己負担する事態に陥らないためにも、保険の空白期間をつくらないよう注意しましょう。
そのためには、旧契約の解約日と新契約の開始日をなるべく同じ日に設定することが大切です。
「保険期間通算特則」が利用できるか問い合わせる
前述の通り、「保険期間通算特則」を利用すれば、中途解約してもノンフリート等級への悪影響がありません。
満期前に自動車保険を乗り換える場合は、保険期間通算特則が適用されるのかしっかりと確認したうえで新しい保険会社を選びましょう。
なお、保険期間通算特則が適用されるためには条件があり、旧契約の解約日と新契約の開始日が同日でないと適用されません。
保険を満期前に乗り換える場合には、保険の解約日と開始日に特に注意して、両者が同日になるよう手続きすることが大切です。
始期応当日にあわせて解約して解約払戻金の減額を防ぐ
始期応当日とは、保険を開始した日と毎月の同じ日付のことです。
例えば、保険始期日が1月10日の場合は、毎月10日が始期応当日です。
保険始期日が1月31日の場合は、毎月末が始期応当日に該当します。
保険料を一括払いした保険を満期前に解約すると、解約払戻金が発生します。
前述の通り、解約払戻金は短期率に基づいて計算され、「6ヶ月までの場合は70%」というように月ごとに料率が決められています。
この「○ヶ月まで」は始期応当日を基準として計算され、始期応当日を1日でも超えてしまうと、さらに1か月分上乗せした基準で短期率が計算されます。
例えば、始期応当日が10日の場合で、10日に解約すると「6ヶ月まで」の短期率が適用されて30%返金されるケースでは、11日に解約すると「7ヶ月まで」の基準が適用されて25%しか返金されなくなってしまいます。
保険を中途解約する場合は、始期応当日を超えないよう注意しましょう。
保険の始期応当日にあわせて解約するのが、保険料の面で最もお得です。
自動車共済が関係する場合は事前に確認
自動車事故による損害を、保険会社ではなく共済組合が補償するのが自動車共済です。
共済の場合は自動車保険と仕組みが異なり、乗り換える場合は特に注意が必要です。
共済や保険会社によっては、ノンフリート等級の引継ぎができない場合があります。
共済から自動車保険に乗り換える場合や、逆に自動車保険から共済に乗り換える場合などは、等級の引継ぎが可能かどうかを事前にしっかりと確認しておくことが大切です。
まとめ
自動車保険の乗り換えは満期時に行うのが一般的ですが、満期前の中途解約も可能です。
中途解約しても違約金などはかからず、手続きも比較的簡単です。
ただし、中途解約した場合に戻ってくる解約返戻金は、当初支払った保険料の残り期間分よりも少額です。
また、新規契約する保険会社で「保険期間通算特則」が適用されない場合は、中途解約によってノンフリート等級のランクアップに遅れが生じてしまいます。
満期前に自動車保険を乗り換える場合は、こうした中途解約のデメリットを計算に入れて、トータルで安くなることをしっかりと確認したうえで行うことが大切です。
実際に中途解約による乗り換えを行う場合は、保険の空白期間をつくらないように、旧保険の解約日と新契約の始期日を必ずあわせるようにしましょう。
また、旧保険の始期応当日に解約することで、解約払戻金の減額を極力防ぐことができます。
満期前に自動車保険の乗り換えを行う際には、メリットとデメリットをよく比較して、中途解約して本当に得をするのか事前によく確認することが大切です。
自動車保険の見直しを考えている場合は、自動車保険の一括見積もりサイトなどを利用して、まずは保険料の比較から始めてみることをおすすめします。
関連記事になります。合わせてご覧ください。