自動車保険は、「ノンフリート等級制度」と呼ばれる等級制度に基づいて保険料が割引・割増されます。
等級は、1年間無事故であれば1ランク上昇し、割引率が増加して保険料が安くなります。
逆に事故を起こして自動車保険を使用すると、等級が低下して割引率が低下し、保険料が高くなります。
等級の上昇や低下によって、どれくらい保険料の割引率に変化があるのか気になっている人もいるのではないでしょうか。
等級によって割引率がどの程度変わるのかを知っておくことは、自動車保険に関する費用を抑えるうえでとても重要です。
特に軽めの自損事故を起こした場合などは、保険を使わずに自分で修理費を出したほうが、以後の保険料の上昇が抑えられてトータルの費用負担を軽減できる場合があります。
その際には、等級の変化によってどれくらい保険料が上がるのかを計算したうえで、保険を使うか修理費を自分で出すかを決めることになります。
今回は、自動車保険の等級制度の基礎知識や、等級による保険料の割引率の違いについて解説します。
もくじ
自動車保険の等級の仕組み
等級ごとの割引率をみていく前に、自動車保険の等級制度について簡単に確認しておきましょう。
自動車保険は等級によって保険料の割引率が変わる
自動車保険は、「ノンフリート等級制度」と呼ばれる制度に基づいて保険料が決定されています。
等級は、ドライバーの安全運転度を示す指標です。
等級が高ければ事故を起こすリスクが低いため、保険料の割引率が高くなります。
その一方で、等級が低ければ保険料の割引率が低下したり、逆に割増されたりします。
保険会社によっては、等級が低いと保険契約を断られる場合もあります。
等級の数値は、日本で自動車保険を提供しているすべての保険会社で共有されています。
そのため、保険会社を乗り換えても等級は維持されます。
チューリッヒやアクサダイレクトなどの外資系自動車保険会社であっても同様です。
等級は無事故で上がって事故を起こすと下がる
等級は、1等級から20等級までの20段階に分けられており、自動車保険を新規契約すると原則として6等級から始まります。
保険契約を結んでから1年間無事故であれば、等級がひとつ上昇します。
しかし、事故などによって自動車保険を利用すると、等級が下がります。
事故を起こして「対人賠償保険・対物賠償保険・車両保険」などの自動車保険を利用した場合は、3等級下がります。
自動車保険を利用しても、原因が「いたずら・落下物・台風・火災」などの場合は、等級の低下は1等級のみです。
等級は1年間に1ランクしか上昇しないため、等級を上げるのには長い時間がかかります。
高い等級は、長年かけて築いてきたひとつの財産ともいえます。
事故を起こすと同じ等級でも割引率が異なる
同じ等級でも、前年に事故で自動車保険を使った人と無事故だった人とでは、保険料に違いがあります。
例えば、同じ10等級でも、無事故の人の場合は「45%」の割引率が適用されるのに対して、前年に事故を起こした人は「23%」の割引率が適用されます。
こうした事故を起こした人に適用される通常よりも低い割引率のことを「事故有係数」といい、事故有係数が適用される期間を「事故有係数適用期間」といいます。
事故有係数適用期間は、3等級下がる事故の場合は3年間、1等級下がった場合は1年間です。
また、事故有係数適用期間中に再び事故を起こしてしまうと、最長6年まで事故有係数適用期間が延長されます。
以上が、自動車保険の等級制度の仕組みです。
保険料をなるべく低く抑えるためには、等級を高く保つことが何より重要です。
各保険会社で等級の割引率は違うの?
保険会社によって等級ごとの割引率に違いがあるのか疑問に思った人もいるのではないでしょうか。
今のところ、各保険会社の等級の割引率はほぼ同じであり、保険会社による割引率の違いを気にする必要はありません。
等級による保険料の割引率は、「損害保険料率算出機構」という団体が算出した料率をベースにして、各保険会社が決定しています。
以前は損害保険料率算出機構が算出した料率の使用が義務付けられていましたが、現在はその義務が撤廃されています。
そのため、適用されている割引率・割増率は各保険会社によって計算されたものであり、必ずしも同じとは限りません。
しかし、計算のベースとなる料率は同じものであり、実際には保険会社による等級の割引率の違いはほとんどありません。
そのため、等級の高低によって選ぶべき保険会社が変わるといったケースは、基本的に起こりません。
等級の割引率の比較
等級の違いによって保険料にどれくらいの差があるのかみてみましょう。
各等級の割引率はどれくらい?
自動車保険の等級別の割引率は、以下の通りです。
なお、実際に適用されている割引率は、保険会社によって多少異なる場合があります。
等級 | 1等級 | 2等級 | 3等級 | 4等級 | 5等級 | 6等級 | 7等級 | 8等級 | 9等級 | 10等級 |
無事故 | +64% | +28% | +12% | -2% | -13% | -19% | -30% | -40 | -43% | -45% |
事故有 | -20% | -21% | -22% | -23% | ||||||
等級 | 11等級 | 12等級 | 13等級 | 14等級 | 15等級 | 16等級 | 17等級 | 18等級 | 19等級 | 20等級 |
無事故 | -47% | -48% | -49% | -50% | -51% | -52% | -53% | -54% | -55% | -63% |
事故有 | -25% | -27% | -29% | -31% | -33% | -36% | -38% | -40% | -42% | -44% |
4等級以上であれば保険料が基準額よりも割引され、3等級以下の場合は逆に割増されます。
保険料の例を挙げると、基準となる保険料が「100,000円」の場合、6等級であれば「81,000円」、無事故の10等級は「55,000円」、無事故の20等級は「37,000円」が支払うべき保険料です。
20等級の人は、自動車保険に入りたての6等級の人に比べて半額以下の保険料で自動車保険を利用できます。
最低ランクの1等級の場合は「164,000円」になり、20等級の人の4倍以上の保険料が必要になります。
保険に入りたての6等級の人と比べても、2倍の保険料がかかります。
保険料を安く抑えるためには、等級をなるべく高く保つことが重要です。
また、先述の通り、同じ等級であっても事故有係数適用期間中の人と無事故の人とでは、割引率に大きな違いがあります。
保険料を低く抑えるためには、事故を起こさないことが何より大切です。
事故を起こすと割引率と保険料はどれくらい変わる?
事故を起こすと、「事故有」の割引率が適用されるため、保険の割引率が大幅に悪化します。
例えば、20等級の人が事故を起こして保険を使うと、3等級下がった17等級の事故有係数が適用されて、63%の割引率が38%に悪化します。
基準となる保険料が「100,000円」の場合、「37,000円」だった保険料が「62,000円」に上がってしまう計算です。
20等級に戻るまでには3年かかり、その間の保険料は、「62,000円+60,000円+58,000円=180,000円」です。
事故を起こさなかった場合の保険料は「37,000円x3=111,000円」であり、3年間の差額の合計は「69,000円」です。
10等級の人が事故を起こすと、45%の割引率が20%になり、基準となる保険料が「100,000円」の場合、「55,000円」だった保険料が「80,000円」になります。
10等級の人の場合は、等級の上昇が遅れることによる影響が長く続くため、事故による保険料の増加額が20等級の人に比べて大きくなります。
等級が変化する場合は保険料がどれくらい変わるかチェックする
1年間無事故で等級が上がる人や、事故を起こして等級が下がってしまう人は、等級の変化によって保険料がどのくらい違ってくるのか、見積もりをとって確認してみましょう。
事故時に保険を使うか否かは保険料の変化をみて判断する
軽い自損事故などを起こしてしまった場合は、保険を使うことによって今後の保険料にどのくらい違いが出るのか、保険を使用する前に確認してみることが大切です。
修理費が比較的安価な場合は、保険を使わないほうがトータルの出費が少なくなる場合があります。
例えば、10等級の人が事故を起こすと、45%の割引率が20%になります。
保険を使わなかった場合は、それ以降事故を起こさないと仮定すると、5年間で「47%→48%→49%→50%→51%」の割引率が適用されます。
それに対して保険を使用すると、事故有係数適用期間は3年間のため、「20%→21%→22%→45%→47%」の割引率が適用されます。
基準となる保険料が「200,000円」だった場合、支払う保険料は、保険を使用しなかったケースだと「106,000円→104,000円→102,000円→100,000円→98,000円」となり、5年間の合計金額は「510,000円」です。
それに対して保険を使った場合の保険料は、「160,000円→158,000円→156,000円→110,000円→106,000円」となり、5年間の合計金額は「690,000円」です。
保険を使った場合と使わなかった場合の保険料の差額は「180,000円」となり、その後も等級の上昇が遅れるため、年に8,000円程度の保険料の差額が生じます。
修理費がこうした差額の合計を上回るのであれば、保険を使ったほうが良いでしょう。
しかし、軽微な修理で保険料の増加額のほうが修理費よりも大きいのであれば、保険は使わずに自分で修理費を負担したほうが、トータルの出費を抑えることができます。
保険を使うのか修理費を自分で出すかは、その後の保険料の変化をしっかりとチェックしたうえで決めることが大切です。
また、修理費が大きく保険を使うことが明らかな場合でも、翌年以降にどの程度保険料が上がるのか、ほかに安く利用できる保険会社がないかなどを、見積もりをとって確認してみることをおすすめします。
保険料の上昇幅を知っておけばそれに備えることができますし、より安価な保険会社がみつかれば、保険会社を乗り換えることで事故による保険料の上昇を抑制することができます。
等級が上がる場合も来年の保険料をチェックしてみる
無事故で等級が1つ上がる場合も、現在と比較して保険料がどの程度安くなるのか見積もりでチェックしてみましょう。
特に8等級未満の低い等級の場合や、19等級から20等級に上がる場合は、割引率の変化が大きいです。
保険料が安くなれば、その分を特約の追加などの補償の充実に回すことも可能です。
また、保険の満期は自動車保険の見直しをする良い機会です。
保険料の変化をチェックするのとあわせて、より安い保険料で利用できる保険会社がないか調べてみましょう。
安価な保険会社がみつかれば、等級の上昇による保険料の減少とあわせて、より多くの保険料を削減することができます。
保険料の確認には一括見積もりサービスが便利
保険料の変化を調べる際や、より安い保険会社がないか探す際には、「自動車保険の一括見積もりサービス(無料)」を利用するのが便利です。
一括見積もりサービスは、その名の通り多くの保険会社の見積もりを一括で確認できるサービスです。
自動車保険の保険料は、年齢・運転者の範囲・車種・走行距離・居住地などのさまざまな要因によって決まります。
そのため、見積もりをとるためには多くの情報を入力する必要があります。
各保険会社のホームページでも見積もりを確認できますが、1社ごとに情報を入力するのはとても大変です。
一括見積もりサービスを利用すれば、1回の情報入力で多くの保険会社の見積もりをとることができ、入力の手間と時間を大きく省くことができます。
一括見積もりサービスは無料で利用でき、利用者にデメリットがありません。
保険料を確認する際には、一括見積もりサービスを積極的に利用することをおすすめします。
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まとめ
自動車保険の保険料は、等級を基準にして決定されます。
等級はドライバーの安全運転度を示す指標であり、等級が高ければ保険料の割引率が上昇します。
事故を起こして保険を利用すると、等級が下がります。
また、事故後3年間は「事故有係数」という通常よりも低い割引率が適用されるため、保険料が大幅に上昇します。
無事故で等級が上がる人や、事故で等級が下がってしまう人は、保険料がどの程度変化するのか見積もりをとって確認してみましょう。
特に軽微な事故を起こした場合は、保険を使った場合と使わなかった場合の保険料の差額をしっかりと確認することが大切です。
保険を使用して等級が下がると、その後長い間保険料が高くなってしまいます。
保険料の上昇幅が修理費よりも大きければ、保険を使わずに自分で修理費を出したほうが、トータルの費用が少なくなる場合があります。
保険料を確認する際には、「自動車保険の一括見積もりサービス」を利用すると多くの保険会社の見積もりを手軽に比較できて便利です。
保険料の変化を確認しながら、より安価な保険会社がないか調べることもできます。
より安価な保険会社をみつけて乗り換えれば、事故による保険料の上昇を抑えることも可能です。
自動車保険の満期を迎えて等級が変化する人は、保険料がどれくらい変わるのかを、いちど見積もりで確認してみることをおすすめします。